仁義なき戦い「3びきのこぶた」

残酷という評価がある本です。

「三びきのこぶた」作:(イギリス昔話)絵: 山田 三郎訳: 瀬田 貞二(福音館書店)

対象:3歳から ジャンル:昔話

世の中には外敵がいます。それが自分より力のある場合、どのように立ち向かっていくか、自分の見守り方を身につけておかなくてはなりません。そして時に敵を出し抜きながら、最後には敵を倒す。これはいつの時代にもあったことです。敵を出し抜き、欺くというのが、外敵から身を守る最良の方法かもしれません。

私はそのことを中学生のころ、仁義なき戦いで学びました。

敵を出し抜き、欺き、自らは生き抜くという点で長けているのは、やはり金子信雄さん演じる山守組組長です。卑劣で狡猾な嫌味な性格に加えて、自分が狙われながら、なぜか次々と周りが倒れ、自分は生き残ります。そこに旧世代と新世代の対立の不条理さを投影せざるにはいられません。そして、もう一方で特徴的なのが、組長の命をねらうヒットマンの存在です。目的を達成するために必要にターゲットにせまります。そして、最後にはやはり自分が死んでしまいます。まだ若いのに。

さて「ヤクザ映画と絵本を結び付けるなんて!」とお叱りを受けるかもしれませんが、やはりこの本は仁義なき戦いと似ています。まず、ヒットマン的な存在は狼です。こぶたは山守組組長でしょうか。一匹目のこぶた、二匹目のこぶたを食べ、三匹目のこぶたを必要に狙います。一匹目や二匹目のこぶたはわらと小枝で家をつくったため簡単に狼に吹き飛ばされて食べられてしまいました。三匹目のこぶたはレンガでつくります。このあたりは身を守るための知恵です。

そして、狼は何度となくこぶたを誘い出しますが、そのたびに「ギャフン」と言わされます。こぶたのかわし方は決してさわやかな、爽快なやり方でもありません。敵を欺くためには、きれいなことは言っていられません。そして、獲物をねらったはずが最後は自分が獲物のトラップにかかり食べられてしまいます。食うか食われるか、仁義なき戦い風に言えば、

殺(と)るか殺(と)られるか

確かに残酷です。人間のきれいなことよりも、現実的な抗争や対立を教えるのも絵本の役割です。少なくとも仁義なき戦いを見せるよりは、よほど刺激は少ないかもしれません。しかし、これがイギリスの昔話とは、イギリスとは戦いの歴史なんですね。

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