柔和な人の言うことはきくもんだ「ガンピーさんのドライブ」

ガンピーさんのふなあそびが有名ですが、あえてドライブの方を。

「ガンピーさんのドライブ」作・絵: ジョン・バーニンガム 訳: 光吉 夏弥 出版社: ほるぷ出版
対象:4歳から 発行日: 1978年

怒らない、いつも笑顔、柔らかい物腰の人っています。この人の怒っているところみたことないなんて人です。別に何かをやれと言ってくるわけではないのですが、その人に言われるとついつい聞かずにはいられない。そんな人っていますよね。でも、それがその人の魅力であるし、人を引きつけるリーダーシップであったりすることは確かなんです。

ガンピーさんはのどかな田園風景にお住まいです。田舎の農夫といった感じです。車に乗ってお出かけすると動物たちに乗せてとせがまれます。

人のいいガンピーさん男の子と女の子をはじめすべての動物を乗せてあげます。

動物たちがドカドカ乗り込んできても怒りません。土足でも気にしません。実におおらか。

車の中がぎゅうぎゅうずめになっても嫌な顔ひとつしません。

順調なドライブを雨が降り、タイヤがぬかにはまって動けなくなりました。力がない、体調が悪い、濡れるなど理由をあげて動物たちはなかなか外に出て車を押そうとしません。

仕事でもこんなことは多々あります。これは「私の仕事ではない」「何であの人だけが早く帰る」「人手がないのでできない」「予算がとれない」などできない理由を並び立てて何もしない人に出くわすこと結構あります。そんなとき、どのようにやってもらうようにするか。これが仕事での腕の見せ所です。もしかして、この本もそんなヒントをもらえるかも!と思って読んでいくと。

ガンピーさん、動物たちに対して何もした様子がありません。(そんなシーンの絵は出てこないのです)ただ、誰かに何かをしろいうわけでもなく、「これじゃ、ほんとうに たちおうじょうだ!」と自分たちの危機を訴えます。すると動物たちはいつの間にか車を押し始めます。そして、車がゆっくりと動き始めると、「やめるな!」と怒鳴ります。「押し続けるんだ」と励まします。人というか、動物に力を出させる要領を心得ていらっしゃいます。動物たちは泥だらけ、その動物たちに対して「まだ泳ぐ時間はたっぷりあるよ」とガンビーさんは自分の家の前の池で泳ぐように促します。頑張ったご褒美の提供です。

人は力づくでは動きません。ただ、ガンピーさんのとった動物たちへの働きかけは、人を動かすための方法そのものです。

危機の共有、その気になったら力を引き出す。頑張ったら労をねぎらう。

なんか絵本というより、リーダーシップの教科書を見ているようでした。どうすれば人を動かすことができるかという視点で本を読んでも面白い作品です。

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