やっぱり寛容「ガンピーさんのふなあそび」

この本は子どもにも大人にもいい。

「ガンピーさんのふなあそび」 作・絵: ジョン・バーニンガム訳: 光吉 夏弥 出版社: ほるぷ出版
対象:3歳 発行日: 1976年09月

「ガンピーさんのドライブ」に続き手に取りましたが、やはり引きつけられるのは、ガンピーさんの人柄です。

「もっともすぐれたリーダーとは寛容であることだ」私が以前に聞いたリーダーの定義でもっとも納得したものです。リーダーは人の間違いやミスも受け入れ、そして自分の批判や攻撃も受け入れ、そして自分に関わるすべての人を受け入れる。これが寛容であることです。

といっても、寛容であることはかなり難しいことです。

中村天風さんも弟子に「なぜ先生はそんなにも寛容なんですか?」みたいな質問をされたことがあります。その中村天風さんの回答もすごい。

「自分だって怒ることもある。ただ自分は怒る時間、カッとなってすぐに冷静になる時間が人よりも短い。それは修行でなしえることができる」というようなことを言われていました。中村天風さんも寛容であるために、怒りをコントロールするトレーニングを積んでるんです。

寛容と怒りの関係は大いにあります。つまり何か他者が自分の意に反したり、自分の考えと違ったり時に、フツフツと怒りの感情が湧きあがるのです。

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今回もガンピーさんの船に次々と動物が乗り込みます。その度にガンピーさん「けんかさえしなけりゃね」「飛んだり跳ねたりしなけりゃね」「うさぎをおいまわしたりしなけりゃね」と禁止事項を伝えます。そして、案の定、動物たちは

その禁止事項を破ります。

そして、船は転覆します。船がダメになっても、歩きながら濡れた体を乾かしながら揚々と岐路につきます。動物たちを見送るときに「また乗りにおいで」と優しい一言です。

子どもたちも禁止事項を伝えると動物たちと同じようなことをします。禁止事項なんか聞きはしません。しかも、けんかを売るように禁止事項を繰り返します。でも、それを許す大人がいます。許される人がいるからこそ、子どもたちは禁止事項のことが分かるようになるのです。動物たち=子ども、ガンピーさん=大人ととらえた世界観が伝わってきます。世間の大人よ、寛容に。

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