ケイゾウさんは4月がきらいです。タイトルに惹かれました。
「なんで嫌いやねん」と突っ込みたくなります。見開き2Pには必ず絵が入っているので、絵本から児童書に移行するのにもおすすめの本です。ニワトリのケイゾウさんはサーフィンがきらいです。ケイゾウさんは工事がきれいです。ケイゾウさんのきらいなものが短編集となっています。そして、なぜ、きらいか?その理由がお話になっているのです。今年は酉年ですし。酉年の絵本としてもいいです。
幼稚園で飼われているケイゾウさんと新入りうさぎのみみこのやりとりが痴話ケンカのようで笑えます。「ずいぶんデブだな」とか、「なによオイボレのくせに」など、児童書にしては口が悪いです。でも、動物たちが本音で話していることが伝わってきます。
そしてケイゾウさんと幼児のやりとりも面白い。幼児たちに無理やりサーフィンをさせられそうになったケイゾウさんが「おいおいやめろ」とか言うんですよ。もちろん、ニワトリなのでセリフは「コケ、コケ、コケー」ですが、そのあとに括弧書きで本音が書いてあります。ケイゾウさん子どもたちを迷惑がったり、うっとおしがったりしているんです。でも実は子どもたちを守ったり、気にしたりしています。
ケイゾウさん、口は悪いのですが、そのことでかえって子どもたちに対するやさしさが伝わってきます。
読んでいて思ったのが、幼児も実は自分たちが大人に本音レベルでどう思われているのか知っているのかもしれません。ケイゾウさんは、大人のメタファーなのかもしれません。このケイゾウさんのセリフに子どもが笑えるというのは、実は幼児に接する大人の深層心理を理解して笑えるということですから結構難しいことなのです。
そして、子どもにとって伝えたいことはもうひとつ、口が悪くても味方をしてくれる人はいいます。そんなことを伝えているような本です。