子どもとインプロ。

インプロのワークショップに久々に参加。インプロとは即興のことで、私が参加したのは即興演劇のワークショップだ。さて、正直に言うと久々にインプロワークショップに参加すると抵抗がある。それは即興で演技をすることの抵抗ではなく、どちらかというと即興で自由になることへの抵抗である。私の日常は会社勤めをしているので、やはり会社の常識やルールなどに思考や行動がしばられることが多い。何かをしようとしても「こんなことを言っても仕方がない」「これをやると痛い目にある」「現実的にはこのあたりが妥当だろう」といったことが経験則から分かっており、思考や行動に制限がかかる。いくら「無礼講だ、率直に、ざっくばらんに言いたいことをいおう、やりたいことをやろう」と言っても、自分の安全な範囲を確かめ、その中での自由な振る舞いを行う。

即興の世界というのは、実は「こんなことを言っても大丈夫だろうか?」ということも相手に受け止めてもらえる(はず)世界である。そこでのルールは自分のアイデアに自分で制限をかけないこと。そう、これは言えば子どもの世界と一緒である。子どもは自由な空想の世界で生きいるので、ポンポンとアイデアを出してお話を紡ぐことができる。大人はどうしても、アイデアを出す段階、また他者のアイデアを受け止めてそこで立ち止まってしまう。インプロではこれを“検閲”といって、検閲する自分を取り除かなくてはいけない。検閲をしないということは、ありのままで自分でいろ、つまりは子どもになれということだ。冒頭の私の抵抗は、子どもになることとに起こっているのだ。それはそのはず、社会人の日常は検閲だらけ。「あれはだめ、これはだめ」「こんなことを言ったら非常識じゃなかろうか」「他者に迷惑がかかるのでは…」自分の周りにも、自分自身も検閲官となって自分の行動を制止する。検閲が外れると、大人の顔は笑顔になる。これは本当にインプロワークショップの現場を観てもらいたいのだが、実際に“子どものように遊ぶ”大人がいる。

実は子どものように遊ぶことで、大人が得るものはたくさんある。たとえば、子育て。未就学児童のお子さんがいれば、まさにその年齢の子どもの状態に戻れと言ってるようなものだから、これほど子育てに役立つことはない。子どもの立場になって子育てに向き合える。実際に、子どもと向き合う時もインプロ的に向き合えば、親も子どもと一緒に楽しんで遊べる。子どもは成長するにつれて、空想のお話をしなくなる。小学生にあがって1~2年経つとやめてしまう。それはやはり人の目を気にし始めるからだ。自分は他者にどう見られているか、検閲が始まる。こうなると自由なアイデア出す子どもらしさどころか、むしろ大人に近づいていく。自分の子どもの成長段階での変化もつかむことができる。

インプロでは相手に良い時間を与える。英語で言えば“give your partner good time”というルールがある。相手に良い時間を与えるためには相手が欲しいものが分かってないといけない。さらに、相手がしてほしいことを相手に伝えなければいけない。インプロにはそのためのゲームもある。これは“相手”を子どもやパートナーに置き換えても活かせることだ。「あなたは子どもの欲しいものを分かっているだろうか?」「あなたはパートナーの欲しいものは分かっているだろうか?」インプロは子育てにも活かせるトレーニングである。今回のワークショップにも学生、役者さんから社会人の方まで幅広い参加者がいた。演劇だけではなく、日常生活を営むうえでも多くの方に活かしていただきたい考え方であり、トレーニングである。

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