「小学館あーとぶっく7・シャガールの絵本」(小学館)1995年04月05日発行
対象:4歳から ジャンル:絵画
私、美術館に行っても音声ガイドは決して利用しません。なぜなら、絵に向かい合う前に、知識や情報が入ってしまうと絵から感じれるものが落ちてしまうような気がするからです。やはり、絵画と向き合うときには絵が訴えかけてくるメッセージを受け取りたいと思っています。このメッセージというのは文字情報以外の情報、「感覚情報」などのことを指します。たしかに、言葉にすると「きれい」とか「いいな」とか、そんな程度の言葉かもしれません。あるいは「えっ!」などの感嘆詞、たった一語かもしれません。それでも絵の場合は言葉にならないメッセージを受け取ることに絵を見る価値があると思います。
絵を見るには造詣や博識が確かに必要です。残念ながら私はそのようなものを持ち合わせていないので、美術館を出た後でそのようなものを身につけます。最近は美術館の出口付近に売店コーナーがあり、丁寧にそこで展示作品の解説書が売っているので、それを購入する場合もあります。
図書館で見つけた小学館あーとぶっく。せっかくなので私の好きなシャガールを借りてきました。子どもに読み聞かせるのではなく、私が読みました。絵に対して、詩がついています。どちらかというと「感覚情報」をよりきれいな言葉にしたといった感じです。絵の表現をうまく言葉にまとめています。ページの隅っこの方には絵が描かれた背景、そして最後の方にはシャガールの絵の特徴、シャガールの生い立ちなどが書かれており、子ども向けの解説書になっています。私たちの時代の美術の教科書よりはよっぽど親切です。
ただ、絵画だけは頭でっかちにならず見て欲しい。
それは良い作品であればなおさらのこと。そして、
絵本で絵を見るより、本物の絵を美術館で見て欲しい。
これが率直な感想です。言葉にならない作者の世界観を表現するのが絵であって、そこで受け取るメッセージはやはり言葉ではなく、色であり線であり、その作家の描写であるべきなんです。それを受け取れる感覚を育てていくのが真の意味での芸術教育というのではないでしょうか。