これこそが最良のビジョンのお手本、彩山構想。

いろどりさんってご存知ですか?徳島県上勝町でつまものをビジネスにされている企業です。つまものとは、料亭など日本料理についているあの葉っぱです。お刺身とかについているのよく見ますよね。いろどりでのつまものの生産者はおばあちゃんたちです。おばちゃんたちがつまもの農家(いろどりさん)となり、もみじや紅梅・白梅、南天、葉あじさいなど四季折々の多くの葉っぱをつくっています。

このつまもので商売を始めたのが社長の横石知二さんです。横石さんは日本料理店で女子大生がつまものを喜んで、紙に包んで持ち帰っているところを見てつまもので商売をすることを考え出します。また、それだけでなく、セブンイレブンの棚にある商品を見て、システムを導入したつまものの出荷方法を思いつきます。そのため上勝町ではおばあちゃんがタブレットを駆使して、つまものを出荷しています。その光景を見て、外部からの視察者はかなり驚かれるとか。横石さんのビジネスの発想力には舌を巻きます。

そういった話が何冊か本にもなっています。

この「そうだ、葉っぱを売ろう」が出たのが2007年、今から9年前です。横石さんは2007年にニューズウィーク日本版「世界を変える社会起業家100人」にも選出されています。そして2012年にはいろどりを映画化した「人生 いろどり」が上映されます。

さて、その後ですが、地方創生の波に乗り、上勝町でも変化が起こっているのではないかと思い、先日上勝町の東京イベントに参加したことを前回のエントリにも書きました。ちょうど、横石さんが新書を出されていたので、思わず手に取って読みました。「そうだ、葉っぱを売ろう」が出て、いろどり事業が注目され始めて、次のステージが書かれてあることを期待しました。いろどり事業の成功要因「出番と役割をつくる」といったことから、地域の人たちをいかに巻き込むか、特に地域の重鎮を納得させる政治力までつぶさに書かれていました。そして最近の上勝町で起こっていること、今後の横石さんの取り組みについてまで触れてありました。なんでも和食ブームに乗って海外進出をされているとか。徳島県の人口1700人の町から世界進出です。

これだけでなく、さすがと思ったのが、横石さんの彩山構想です。こんな良質のビジョンは最近、お目にかかったことはありません。

上勝町は町の9割が森林ですが、そのほとんどが杉の人工林です。昔(1980年代)は木材は高値で売れていましたが、海外から安い木材が入ってくると売れなくなります。そして木を切れば赤字になってしまうので、人工林で人の手入れがなされなくなり、森林は荒れています。これは人工林を抱えている自治体はどこも同じような現象が起こっています。水はけが悪くなり、土砂が流れます。またスギ花粉で人々を悩ませます。動物たちも生態系が変わりエサがなくなるのでエサを求めて民家まで降りてきます。

これを打破しようとしているのが彩山構想です。

杉の代わりにつまものの商品となる葉っぱを栽培・収穫できる広葉樹を植えて、町の山林全体を”養殖木”にする構想です。春には梅や桜が一面に咲き乱れ、秋には色鮮やかな紅葉を見ることがでできるように、広葉樹主体の美しい山に変える一大プロジェクトです。

広葉樹は針葉樹と比べると水はけがよいのです。また、自然林は広葉樹が多いのです。さて、素晴らしいのがこの構想の最後の一文、文字だけ読んでも、その美しい山の情景が目に浮かんできませんか?「良いビジョンは人のイメージにうったえかける」のがビジョンの要件です。そして、このビジョンのなかには人工林の抱えている問題を解決する方法も同時に示されています。だから人を魅了させて、実現したいと思わせるのです。ここまでのビジョン、そう出会えることはないと思います。本の中には彩山構想のイメージが描かれています。これだけでも見る価値はある本です。

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