あはき業にも競争原理が押し寄せる。

早朝、車に乗っていたので、ラジオをかけていました。

NHK第一を聴いていると、テーマは「あはき師の現状と課題」。あはき師とは、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師の総称です。むかしから視覚障害者の方が就労することが多い職業ですが、それが最近では減少傾向にあるとのこと。

その原因の一つに、あはき師の高齢化による廃業。担い手の高齢化はどこの業界でもよくある話なのですが、あはき業の場合はそれだけではありません。

晴眼者の開業。晴眼者が、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師として開業しているので、いわば競合が増えたということです。ちなみに晴眼者開業者の平均収入が400万だとすると、視覚障害の開業者の平均収入は100万ということです。この差は一体何なんでしょう?さらに、リラクゼーションなど、あはきに近似したサービスの無免許業者が増えているということです。また、「癒し」のキーワードに代表されるように、新しいお客さんはそのイメージの良さからリラクゼーションなんかに流れてしまいます。イメージ戦略で負けてしまっています。従来から店舗を構え、あはき業を営んでこられた方には、さすがにイメージでリラクゼーションに対抗するすべはないのでしょう。よく考えると視覚障害者のあはき師はプロモーションなんかも、Webサイトをつくってそこで集客することは難しいので、電話くらいしか集客の手段はないのではないでしょうか。プロモーション面なんかも課題がありますよね。

でも、高齢化は日本全般に言えることなので、あはき師の出番はあるのです。高齢者の在宅での施術のニーズが増えているようです。ただし、それも行政の手続きが必要になります。視覚障害の方にとってみれば、手続きを自分ひとりでやる場合は、難易度があがります。そして、在宅の施術の場合、移動が伴います。これも視覚障害者にとってみればハードルです。

このように視覚障害者のあはき師がどんどん追いやられている、ということをニュースでやっていました。

私もかつて視覚障害者のあはき師の方にマッサージをしてもらったことがあるのですが、身体の扱い方が全然違うのです。私の体を触ると、固くなっているところでピタッと手を止め言い当てます、そこを丁寧に施術してくれました。おそらく、視覚を失っている代わりに、手の触覚や聴覚が鋭くなり、触っただけでわかるようになったんだと思われます。そして、手に力があり強く揉まれるのですが、普通だと揉み返しとかあるのですが、それもなく終わった後も不思議と痛みがないのです

こういうのって晴眼者にない強みなんですよね。感覚でみがかれた技術が活かされないのは非常にもったいないです。技術についての高さをプロモーションしたり、ニーズがあるところへ進出するための手続き代行をしたり、移動のサーポートなどできれば、まだまだあはき師の活躍の場所はあるはずなのですが、これが市場原理によって淘汰されるのはあまりにももったいない。

江戸時代から視覚障害者の方が就業していたあはき業、今ではあまりなり手が少なくなっています。職業の存亡の危機と言えます。社会問題って、正直誰もが話題にする大きな話題ではありません。むしろ、今回のように特定者に関係する狭い範囲の話です。でも、その人の生活を脅かしたり、危機がせまっているわけです。それを解決するのが社会問題です。そして視覚障害者のあはき師のように競争から守らなくてはならない人もいるのです。日本盲人連合会が問題提起されていますが、まだまだこの問題は世間の人たちに知ってもらわなくてはいけません。

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