「生産性」伊賀泰代さんの本が書店に並んでいます。
本当にこの本、今の時代の本質をついています。目先の生産性を目指すのではなく、インプット量に対してのアウトプットの量を最大化していこう、というすごーくまっとうなことを言われているのです。
たとえば昨日まで1時間かかっていたものを、次の日は30分にして同じ質のアウトプットを出す。生産性を上げるとは簡単に言うとそういうことです。そして、それが15分と少なくなり、最終的には自分がやらなくても良いように標準化して、誰がやっても同じアウトプットが出せるようにする。
単純な話、1時間でやる仕事を半分の時間で終わらせようとすれば、スピードを速めるしかないのです。それが成功すればさらにスピードアップが求められます。
で、思うわけです、どこまでスピードアップして、生産性を上げることを求めればいいのって。人間がいくら成長欲求があり、高みを目指す生き物だからといって、体力的、物理的に限界がきます。それを超えてまで生産性を求めるのか?
生産性という指標を見せないで、仕事の改善を求めるのはゴールのないマラソンですが、一方でいつまでも生産性を上げ続けることを求めるのもゴールのないマラソンをしいているようなものです。
以前、会社はゴーイングコンサーンを目指して成長していかなければならない、ことを研修で聞いた中小企業の新入社員が、「会社は成長しなくてはならないのはわかりました。では私たちはどこまで大きくなればいいのでしょうか。CANONでしょうかTOYOTAでしょうか」と真顔で質問をしていたことがあります。これって、結構、成長の限界というか、成長の現実をついた質問であると思いました。規模を拡大するという意味ではなく、倒産にしない程度に経営を成り立たせるということですが、新入社員は絶えなき売り上げ拡大をイメージしたようです。昨年と同じことをやっていれば、企業の売上は減少します。少しでも、改善をして売上を維持させます。大きな売上拡大につながれば、それはイノベーションと言えます。
天井というものを設けてないと、やはり人間は嫌になるのです。そしてたまには休みたい。これ、人間の本能的な部分での本音です。
生産性に歯止めをかけるのも人間としての生活を保証するためには、必要なことなのです。人間らしくやりたいなぁー、これ今の時代の人間の気持ちの代弁ではないでしょうか。