安野先生の本はどこか旅情的な気分になります。この本は時代を越えて昭和トリップです。
「あいうえおみせ」安野光雅(福音館書店)
対象:4歳~、ジャンル:ことば
安野先生の絵本を見るとどこかに連れていかれるような、まさに絵本を旅する感覚になれます。「旅の絵本」なんかはまさにそうですね。
うちのこどもが平仮名に興味をもち、読み書きがなんとかできるようになってきたので、この本を手に取りました。
あいうえお、いろはにほへと順にいろんなお店が紹介されています。あめや、いしやきいもや、うんそうや、えんとつやなど。メジャーなお店から、今ではあまり見かけなくなったお店までその種類は多様です。
うちの子どもは、平仮名を読むことに関心があって
「や・お・や」「り・は・つ・や」「も・ん・か・き・や」
など一言一句ゆっくり読んでいます。平仮名が読めればそれで満足するわけではなく、当然「これは何?」とお店の質問をしてきます。「そめものや(染物屋)」なんかは「布に紺色のいろをしみこませるお店だよ」などと説明はできますが、「れんたんや(練炭屋)」「わさび漬け屋」などは説明に困ります。
そういえば、今の仕事に就いたとき、
「経営というものを小学生に分かるように説明できなければ、経営を教えることはできない」
なんて言われましたが、まさに子どもにも分かるように説明するためには、
- なるべく平易な言葉を使う
- ものごとなるべくそぎ落として単純化する
- イメージに働きかける
といった必要性を感じます。
まさに絵本はイメージに働きかけるのはもってこいですが、この本に関しては昭和を生きた世代の人には、イメージしやすいですが(記憶があるので)、今の子どもたちには新しい世界です。子どもたちはそんなお店があったことに驚くはずです。「いまどき、すでに無くなっているようなお店を知ってどうなるんだ」という意見もあるかもしれませんが、実はお店というのはそれぞれが立派な事業家です。独立事業主というくらいですから。
私が子どものころは、将来の夢で「おもちゃ屋」「花屋」など、独立事業主の夢がたくさんあがっていました。最近は「公務員」など、現実的な夢があがってくるとか。別に公務員が悪い、組織に勤めるのが悪いとは言っていませんが、子どもの夢には独立マインドや事業家精神などがあってもいいのではないでしょうか。「どんなことでもお店になりえる、またその分だけビジネスのチャンスがある」ととらえれば、新しい起業家が誕生する土壌が日本にはまだまだあります。日本を担う起業家の輩出を!願った本です。勝手にこの本のメッセージをつくりあげてしまいました。