外からは分からないことを分かろうとする「中をそうぞうしてみよ」

これも科学本です。外からみれば何の変哲もない普通のものなんですが、そこを敢えて中はどうなっているんだろう?と興味、関心を抱きます。

「中をそうぞうしてみよ」 作: 佐藤 雅彦 ユーフラテス出版社: 福音館書店
対象:5歳から 発行日: 2008年01月

以前、杉田玄白が人間の身体を解明した「解体新書」を翻訳するまでに、処刑場に行って死者の身体を観察していたという漫画を読んだことがあります。「なぜ、そこまでやるのか」というくらいの執念が伝わってくるような漫画でした。それは医者として、人間の身体の構造や内臓の関係性などを明らかにしたかったからです。また、それは中身を知りたいだけではなく、中身を知ることで病気や怪我への治療も大きく変えることができ、医学の世界に貢献できるからです

人体模型

理科室の身体模型はやはり不気味です。それは分かりすぎているから、ということもあるのでしょう。

外から見ても中身が分からないもの、それはやはり解体するしかありません。その解体して、もののしくみや構造がわかることが科学者の喜びにつながります。解体してしまうということは壊してしまうことですから、ものは元には戻りません。しかし、しくみや構造がわかることで、新たに同じものをつくることができるのです。これが科学の再現性です。

自分で問いを持ち、その問いを解明するのは科学です。「中身はどうなってるんだろう?」と疑問を持ち、その中身の構造を解き明かす。そんな感性を子どもたちにも早くから持ってほしいものです。

さて、この中身を見るアプローチとして2つの方法があります。1つは裁断、切断して中身を見る方法です。この本なんかはタイトル通り、真っ二つにあらゆるものを割っています。この本も子どもに中身を想起させるにはおすすめの一冊です。(かこさとし先生の作品ですが、残念ながら手に入りにくいです)

だんめんず だんめんず
文・絵:加古 里子出版社:福音館書店絵本ナビ

そして、もう一つが透視です。そうですレントゲン写真で撮ればいいんです。これならものを壊す必要がありません。まさに科学の進歩が実現したことによる、なせる技です。本の中にある豚の貯金箱もかなづちで割らなくていいんです。

そう考えると、解体新書が翻訳された時代にレントゲン写真があれば、医者の姿勢や医学の世界もまた変わったものになっていたでしょう。杉田玄白もさすがにあそこまでは立ち合いはしなかったでしょう。

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