これは映画になる「つみきのいえ」

つみきのいえ
文: 平田 研也
絵: 加藤 久仁生
出版社: 白泉社
発行日: 2008年10月

この絵本を読んだとき、素敵だなと正直思いました。

家が海に水没するので、その度に家のうえに家を建てる。なんか、温暖化により消滅する街を見ているようです。

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(つみきの家は積み重ねることで高くできる)

主人公のおじいさんが新たに家を建てていると、大事な大工道具を水の中に落としてしまいます。潜水服を着て大工道具を取りに潜ると、そこはかつておばあさんと過ごした部屋。そこからさらに下にもぐると子どもたちが独立したときの部屋。そこからさらに下は・・・

部屋を潜るたびに、どんどんその部屋で暮らした時の思い出がよみがえります。

そうなんです。そもそも家というものは雨露、風をしのぐだけではなく、そこには人の生活があり、そして思い出が宿るわけです。

時代時代に思い出はあるし、その部屋に住んだ人によっても思い出は異なる。最近、空き家が増えているといいますが、空き家になる前には当然、誰か住んでいたわけで、その人しか分からないその家での物語があったのです。

しかもこの本は家が断層になっていることで、深く潜れば潜るほど過去に戻っていきます。潜るという行為がおじいさんの経験を辿っていくように思えます。

構成の面白さから、これは映画になるな、と思っていたら、なんと元は短編のアニメーション映画だったんですね。しかも第12回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門大賞受賞。映画はセリフが一切ないのですが、物語が見事に伝わってきます。おじいさんが潜るにつれて、何か切なさがこみあげてくるような伝わり方をしてきます。

そしてアニメーションをリメイクした絵本には文があります。ちょっとアニメーションとは違った箇所もありますが、おじいさんの描写を文字で追うことができます。

絵本をアニメーションや映画にしても、正直優れた作品を見たことはなかったのですが(この絵本は先にアニメーションが出ているので順番は逆です)、この絵本だけは両方読む、視る価値があります。できればアニメーション、絵本の順番がよいでしょう。サイレントでイメージを膨らませて、絵本でおじいさんの歴史を紐解く、そんな作品です。

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