「何でもICTにすればいいってもんじゃない!特に子どもの学習教材なんかは慎重に検討すべきだ。」
なんて思っていましたが、バリアフリー絵本展に行って、ようやくICT化によって何が解決できるかが分かりました。
バリアフリー絵本展ですが、一般に流通している絵本を読みたくても読めない子どもたちがいることを思い知らされます。
点字の絵本をはじめ、触る絵本、手話つきの絵本、道具を使った絵本など、絵本にしかけや工夫が凝らされています。たとえば手話の絵本などは、絵本のなかの人形が紐を引っ張ると、手を動かして手話を表現します。また、絵だけでストーリーを展開する絵本もありました。そこに必要なものは言語ではなく、子どもたちの想像力です。そういった本を手に取って見ていると、関係者の気持ちや苦労みたいなものが伝わってきて、少し目頭が熱くなります。
また、この企画の素晴らしいのは障害のある子ども向けの本だけではなく、障害について扱った絵本も紹介しています。たとえば、アスペルガー症候群というものがどういうものか、絵本で描かれています。そのような本を世界各国から集めているのです。
アスペルガーの心 パニックダイジテン
作・絵:フワリ出版社:偕成社
このような絵本を取りそろえるだけでも、十分問題提起になっていたのですが、最後にびっくりしました。
マルチメディアDAISY図書が、実際に紹介されていました。DAISYとは、
マルチメディアDAISYは、現在広く流通している音声DAISYのさらに進んだもので、音声とその部分のテキストや画像等がシンクロナイズ(同期)して出力されます。パソコンを使って利用します。視覚障害者・肢体障害者・聴覚障害者・学習障害者・寝たきりの人等様々な人が利用できる、アクセシブルなデジタル図書です。
「日本図書館協会障害者サービス委員会(https://www.jla.or.jp/portals/0/html/lsh/redheel.html) 引用」
実際、体験してみました。
なんと、音声で絵本読んでくれます。
しかも背景の色や文字の色の変更も自由自在。これなら色覚障害があっても自分の見えやすいように変更することができます。
さらには、読んでる箇所を自動的にハイライトしてくれます。
しかも、読むスピードや間も自分で設定できます。これなら聴くことだけで絵本が分かります。
私はデジタル教材に触れることで、子どもたちの五感が育まれないことを危惧していましたが、世の中には五感のどれかが機能しない子どもたちもいるんです。そういう子どもたちにとってみれば、ICTが機能しない感覚の補助機能となるんです。絵本がすべての子どもたちが一律に読めるとは限りません。障害のある子どもたちが読むためには、その子どもたちに合わせて絵本をつくらなくてはいけません。やはりそこにはコストもかかります。そうなると出版社としては多くの点数を出すことはできません。ただ、ICTであれば特別仕様に合わせたコンテンツをつくり、コストを下げる可能性を秘めています。人間が便利になる、あるいは人間が稼いで豊かになるよりも、困った人を助ける、問題を抱えた人の問題を取り除く、そんなために技術革新はあってもいいのです。技術革新とは何のためにあるのか、考えさせられた一日でした。