子どもに経営を教える。難しいことです。
「レモンをお金にかえる法: “経済学入門”の巻, 第 1 巻」 著者: ルイズアームストロング 翻訳: 佐和隆光 イラスト: ビルバッソ 出版社 :河出書房新社
対象:小学生 出版年:2005
以前金融機関のトップと採用の話になったとき、「実家がお商売をしている学生は何としても採りたい。お商売の感覚は教えて身に付くものではない。うちとしてはお商売の厳しさを幼いころから経験している人に来てほしい」と言われていました。金融機関ですから、顧客はお商売をしている事業主です。その事業主にお金を貸すには、事業主と同じ感覚を持ってほしいということです。つまりお金のやりくりの厳しさを知っておいた方がいいということです。
このお商売というものは教えようとしてなかなか身に付くものではありません。お商売の学問、たとえば経営学がありますが、経営学を学んだところで、明日からお商売ができるかというとそれは別の話です。そのお商売感覚とは幼いころの経験で身に付くものなのです。「3つ子の小僧習わぬ教を読む」ではありませんが、3歳くらいの子どもでも親が客商売をしていると、おのずと接客技術を身につけるということです。また、資金繰りに苦労した事業主の子どもであれば、なおさらお金に対しては真剣で厳しい金銭感覚が養われるのです。
「うーん、わが家のようなサラリーマン家庭ではそれはできない」と思っていて、それであれば絵本でそのようなことを教えた本はないかと探していたらありました。
絵本と言うより、児童本になります。でも、翻訳は経済学者の佐和隆光さん。何か内容に期待ができます。
少女がレモンをレモネードにして売るという話ですが、価格はどのように決まるか、利益はどのようにしてでるか、従業員を雇うとはどういうことか、など経営について学べます。
また、労働者との争議が起こった場合、また、ボイコットされた場合、
労働争議のことまで学べます。このあたりが訴訟社会アメリカっぽい。
まだまだアメリカっぽいのは続きます。雇った社員が独立して競合になって、値引き競争が始まり、最後には競合店と合併してしまいます。
別にコレ、経済小説の話ではなく、少年と少女がレモンをもとにレモネードをつくって売るだけの話なんですけど、分かりやすい題材で実に経営の基本的なことが学べます。
小学生でも分かる経営の話になっています。
ただ、最後の解説で佐和さんが次のように書かれています。
意味の分からぬまま耳にしたことがあったり、外国語のように未知の単語であったりするかもしれません。それはいますぐ理解できなくてもいいのです。でも、いちど大きな声で読んでみてください。いつかきっと、どこかで出会うことがあるでしょう。
とあります。さすがに「資金の流動化」などは、もう少し噛み砕いて説明してほしかったんですが、でも、今のところこの本以上に絵本や児童書で経営を分かりやすく扱った本は出会っていません。