いつの子どもたちにもずーっと人気がある戦隊モノ、人気の秘訣が分かってきました。変身するからです。しかも変身して強くなる。強くなりたい願望がある男の子にとってみれば憧れです。
「へんしんトンネル」作・絵: あきやま ただし 出版社: 金の星社
対象:3歳から 発行日: 2002年09月
ただ、これが弱いものになれば、話は別です。全然、子どもたちは憧れを抱きません。カフカのように
私は朝、起きたら芋虫になっていた
なんて言っても、ちっともうらやましくありません。ただ、これは意外性があって衝撃なのです。戦隊モノのような予定調和の変身ではなくて、意外性を楽しむ変身です。その変身が自分が予想だにしていなかったものほど、面白い。喜劇でいう、違いの差を楽しむ要素です。
へんしんトンネル。トンネルをとおれば変身します。
知る人は知りますが、作者があきやまただしさんなので、どーみてもキャラクターはながっぱなんです。
でも、かっぱが「かっぱ、かっぱ、かっぱ」と「ぱっか、、ぱっか、ぱっか」になり馬に変身します。子どもたちはそれで大喜び。
何が楽しいん?
と思わず、理由を聞いてしまいます。しかし、子どもたちにとってみれば言葉が変わったことではなく、本当にかっぱが馬に変身することが面白いようです。これはまさに意外性を楽しむ変身です。戦隊モノの変身とは違います。
さて、変身願望はおとなにもあります。大人の場合は予定調和の変身ではなく、意外性の変身です。日常の自分から離れて、非日常の自分を演じる。すごーい、真面目な人が女装趣味があったり、かぶりものをしたり、あれは変身願望から来ているのではないでしょうか。変身するにしても自分と似ているものではダメです。自分とはぐーーーーんと離れた存在にならなくては変身の満足度は満たされません。ちょっと自分に疲れているのかもしれません。
人間は色んな仮面をかぶっています。勤め人として、家族の一員として、友人として、先輩後輩として、状況に合わせていろんな変身をします。でも、それは他者あっての自分、他者に合わせた変身なのです。そうではなく、自分がなりたいものに変身するというのが生き生きとした変身なのです。それが意外性の変身につながっているのかもしれません。
変身を楽しむってなかなか複雑です。