自分と他人は違う、それを受け入れるしかない。
「アベコベさん」作: フランセスカサイモン 絵: ケレンラドロー 訳: 青山 南 出版社: 文化出版局
対象:5歳から 発行日: 1997年
職場がダイバシティーになってきています。正規社員、非正規社員など雇用形態が違う社員が一つの職場で働いています。また、外国人も当たり前のように職場にいて、そして女性が働きやすい職場をいかにつくるか、そんなことをひっくるめてダイバシティーマネジメントと言っています。日本語で言えば、多様性に対する職場管理といったところでしょうか。この多様性の職場でうまくやるには、どうすればいいか?これが最近の日本企業の職場でよく言われることです。先日も中国赴任されている方と話をしていたら、現地の従業員は絶対に「自分が悪い」とは認めない、と言われていました。日本人ならすぐに「すいませんでした」というところを、現地の中国人はそれを言わないそうです。そして、いかに自分に非がないか、ということを結構な時間説明してくるのだそうです。
国籍の違い、言語の違いのみならず、文化の違いなども含めていろんな人とと一緒になって何かをやろうとするとき、最大のポイントは、
違いを認め、「そういうものだ」と思って受け入れる
しかありません。実は、これは日本人と外国人だけではなく、日本人同士でもあるし、同じ地域に住んでいたって「違い」というものは必ず発生します。違いが出れば、そこで不満や葛藤が芽生え、争いのタネになります。そうならないためにも前提として、同じ組織にいて、同じ目標を目指しているけど、個々の人たちは違うことを認識しておかなければなりません。
そんな旬なテーマがなんと絵本で学べます。アベコベさんの家族はやること、なすことがすべて世間とあべこべ、時間的な概念、空間的なとらえかた、物事の良しあしすべてが世間とまっ逆です。
これで日常生活が成り立つんだろうか・・・?そもそもどうやって生計を立てているのか、この家族は?という現実的な突っ込みはさておき、アベコベさん、ご近所から子どもの面倒を頼まれて、ご近所の家に家族でお邪魔します。その家に入ってアベコベさんの家族はびっくり、すべてがアベコベさんの家族と逆だからです。部屋の家具をはじめ、家にあるものをすべて逆さに置きなおしてしまいます。もちろん、親切心からです。
そして、この家にどろぼうが入ります。窓から入ってきたどろぼうは、アベコベさんにとってみれば正しい家の入り方です。そこであべこべさんはどろぼうをお客さんとして見なし、歓迎します。歓迎として、ケーキを投げたりします。これもアベコベさんにとってみれば正しい歓迎です。これに驚いたどろぼうは逃げていきます。アベコベさんの行動は、普通でないどろぼうとある意味一緒なのです。そこへ家の持ち主のご近所さんが帰ってきて、「どろぼうが出ていくのが見えたけど、(部屋を見て)まぁーひどい」となるわけです。
もちろん、どろぼうは部屋荒らしをしていません、部屋をめちゃくちゃにしたのはアベコベさんです。アベコベさんの娘さんが言います。「きれいにしてあげたのにお礼も言わないのね」と。そこでお母さんが、
世の中にはいろんな人がいるのよ
その通りです。いろんな人がいると思うしかないのです。これまた、不思議なもので、いろんな人でも自分たちと違えば違うほど、その活動は目を見張るものがあり(驚き、モノ目面しさ含めて)、新たな発見があるものなのです。ただ、アベコベさんのような人が近所にいれば、私はちょっと嫌かもしれません。そういえばゴミ屋敷なんてむかしありましたが、あれも世間から見れば変ですが、あれを変でないという人も必ずどこかにいるのです。そう考えれば変って何なんでしょうか?