奇跡は狂気と失敗から生まれる

自然栽培をするようになって、「奇跡のリンゴ」をもう一度手に取りました。木村さんの映像を見たことがある人であれば、分かると思うのですが、本から木村さんの声が聞こえてくるようです。それほどインパクトのある人です。

改めて読みますと、

やっぱりこの人突き抜けています。

実現不可能と言われた無農薬のリンゴをつくるくらいですから、それは周りから変わり者と言われようが、村八分にされようが気にしない。挑み続けるにはそれくらいの気構えがないと務まりません。そればかりではなく、木村さん

どん底やたくさんの失敗の経験をしています。

でも、決してあきらめません。あきらめないだけでは成功はしません。木村さん、発想の転換が起こるんです。首をくくろうと山に入った時にどんぐりの木を見ます。そこで土を自然にかえすヒントを得ます。これまで害虫や病気を除去しようというスタンスから、すべてと一緒に暮らすことができるスタンスに改めます。

木村さんの畑ではソーシャル・インクルージョンならぬナチュラル・インクルージョンが起こります。

隣の農薬散布している畑から木村さんの畑に蛾が移ってきているなどの不思議な現象も書かれていました。

これまでにっくき害虫としていた虫も顕微鏡で見ると、可愛い顔をしている。むしろ、益虫としていた虫の方が怪獣みたいな顔をしている、

と面白いことを言われています。やはり、本にも書かれていますが、害虫、益虫を決めるのは人間の都合なんです。植物を食べる虫は益虫に食べられるためにたくさんの子孫を残そうとする、逆にその虫を食べる虫はそれより少ない個体しか生まれない。これはみんな自然の摂理です。

それらをありのままに受け入れる、人間が介入しないことが一番良いと辿りついたのが木村さんのこたえです。

なんか、もはや禅の境地です。

たしかに奇跡ではあるのですが、自然が本来もっていた力を取り戻すようにしただけです。生態系を元にしたといいますか。それは人間の身体にとってもよいことですが、人間の経済活動には悪いことで、木村さんは滅茶苦茶苦労されます。でも、その結果木村さんのりんごは経済活動のなかで受け入れられるようになる。

なんだか禅問答のようになってきました。

感動のストーリーだけでなく、自然との共生とは何か、その中での人間とは何かを問うた本です。

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