朝は来る。そして朝は新しい1日の始まり。絵を見ただけでそのメッセージがひしひしと伝わります。
「あさになったのでまどをあけますよ」荒井良二(偕成社)
対象:3歳~
この本、震災後に荒井良二さんが自分にできることとして描かれた本です。窓を開けるとは明日へのつながり、そして明日は誰にでも来る。そんな想いが込められているようでした。
そして荒井良二さんの絵本に引きこまれるのは、当たり前で申し訳ないのですが、やはり絵です。荒井良二さんが描く山や海や川、そしてまち、これは私たちの中にある日本の原風景そのものです。遠くへ広がっていく風景をみると、どこか懐かしい山や海や川が描かれています。それは遠くに行くほど広がりがあり、まるで私たちを包んでくれるようです。これは、私たちのより所、帰る場所、ふるさとをあらわしているようです。
かつて、仕事で徹夜が続いてそのときの私の上司が言いました。
「疲れを吹き飛ばすためにパッとやろう!」
疲れていた私の先輩はむっとして言いました。
「明日があるんで帰ります」
さらに怒って上司がいったセリフが、
「明日は誰にでもある!」
笑えましたが、何か疲れが吹き飛んで元気が出ました。この絵本も同様の気持ちにさせてくれるのです。
たとえ苦しいことやつらいことがあっても、明日になればまた新しい朝が来る。別にやりなおそうと言うわけではありません。前日のことを忘れようというわけでもありません。朝が来ることは、迎えた人にとっては終わりではないんです。これからの始まりなんです。次につながっているんです。そんなメッセージが伝わってきました。