ぐりとぐらはオスなんでしょうか?メスなんでしょうか?
「ぐりとぐらのかいすいよく」作:中川 李枝子絵: 山脇 百合子(福音館書店) 1977年04月発行
対象:3歳から ジャンル:冒険
よく演劇の練習なんかでやるのですが、目の前に宝箱がある設定にして即興でお芝居をしてもらいます。役者たちは、それをすぐ開ければいいのですが、いざ演じると
「ちょっと待て罠があるかもしれない、様子をみよう」
「開けるにしても鍵がない」
とか、なかなか理由をつけて宝箱を開けようとしません。即興のお芝居なので、宝箱を開けてお宝をたくさん見つけたというシーンを自分たちでつくればいいのですが、それをしません。それはなぜでしょう。
怖いからです。
箱を開けて何か起こるのが怖いのです。人は新しいことを受け入れる、変化を起こすのことに無意識のうちに抵抗しているのです。私たちは目の前で起こったことをそのまま見過ごしたり、無視したり、否定します。仕事なんかでもそうです。リスクをとって面倒くさいことが起こるんだったら、現状維持のこのままでいいやなんてやり過ごします。残念ながらこれでは進歩はしません、むしろ変化に対応できずに退化の道を突き進むことになります。
さて、ぐりとぐらで面白いと思うのは、この2匹は目の前で起こっていることに絶対、
食いつきます。
今回も海に流れてきたビンを拾って、中に入っていた手紙を手にします。手紙のSOSの内容を読んで、ぐりとぐらは泳げないのに、浮き輪をつかんで海の中に身を任せ灯台を目指します。これってリスクテイカーのお手本のような行動です。リスクテイカーには助ける人が現れます。今回はうみぼうずです。灯台につくと今度はうみぼうずを助けて、ぐりとぐらはお礼にうみぼうずに泳ぎを教えてもらいます。なんと物語の初めには泳げなかったぐりとぐらは泳げるようになりました。しかもイルカジャンプまでできるようになります。リスクをとって行動を起こしたからこそ、手に入れることができたのです。
ぐりとぐらのシリーズは、結構発見から物語が進んでいきます。何よりも素晴らしいのはこの2匹はこの発見を好奇心を持って逃がさず、前に進むことです。そうなんですよね、目の前のチャンスを逃さず、自分が行動していかなくては物語は進展しません。それは絵本のなかでも、生活でも、人生でも同じことが言えるのではないでしょうか。