「ビジネスは30秒で話せ」Kevin Carroll,Bob Elliott (著),高松 綾子 (翻訳) (すばる舎)
久しぶりにビジネス書の書評です。
最近はピッチやライトニングトークに見られるように、ショートプレゼンが流行っています。そりゃそうです、忙しい意思決定者を短時間でいかに口説くか、情報を多く持った聴衆をいかに惹きつけるか、これらはビジネスにおいて今後ますます増えてきます。この本は短く、魅力的に伝える技術を構造的にまとめています。まずは「準備」。プレゼンにおいて準備は大事です。
聴衆に合わせて話すとか、相手にとっての(話すことの)メリットを伝える
など、すごくまっとうなことが書かれています。
そして「内容」。始め・中・終わりのダイヤモンド・モデル。このモデルで話の内容を組み立てれば伝わる中身ができあがります。そればかりでなく、
聴き手の関心をつかむ、聞き手のアタマに残す、相手に何をしてほしいかを伝える
など、短時間のプレゼンで効果的な内容の組み立て手法がしっかりと入っています。
話し方も間の取り方、エネルギー量について、これも意識すれば伝わり方はかなり変わります。
そして、最後に質問の対処。これはプレゼンの成否を分けるイベントです。せっかく良いプレゼンをしたのに質問でたじたじになんてこと経験ありませんか?またプレゼンで質問があると“いやな気”になりませんか、あるいは質問をさせないように時間いっぱいしゃべり続けたりしたことはないでしょうか。私はあります。それはなぜか?質問が怖いからです。逆に質問をする方も、「この人の話そのまま信じていいんだろうか?」と不安なのです。
人は不安だから質問をします。質問をされる人も準備をしていないと怖いのです。
そう考えれば、質疑応答とは双方の不安を解消するプレゼンの肝であり、プレゼンでいうリスクマネジメントであり、双方理解のためには必要なことなのです。ただ、そんな大事なことにも限らず、今までその方法論を教えてもらったことはありませんでした。この本はそれがあります。そのポイントが実に明快。
前向きな気持ちで質問を聴きましょう。
質問を別の言葉に置き換えて、自分の答えやすい状況に変える。
喧嘩ごしの質問者にはプレゼンや会議の後で話すことを提案する。
質問者に敬意を払う。
そして、最後は今までの「まとめ」です。書かれてえある大事なことを繰り返します。この本のつくり自体がプレゼンの構成になっています。よくできた本です。短いプレゼンに限らず、長いプレゼンでも使える技術が盛りだくさんです。