空気という概念を伝えるのは難しい。
「くうき」 作: まど・みちお 絵: ささめや ゆき 出版社: 理論社
対象:4歳から 発行日: 2011年05月
まどみちお先生が空気をどのように詩で伝えるのか興味がありました。谷川俊太郎さんもそうですが、詩人の絵本って面白いですよね。詩人の言葉が絵で表現されるんですから(当たり前のことを言っていますが)。詩の朗読だけでは膨らまないイメージ、見えない世界が絵を媒介にして拡がりをみせる感じがします。もちろん、詩の言葉と絵が合わないことがあります。
さて、今回の作品ですが、4歳児に「くうきって知ってる?」と質問をします。「あっ、あれね」と言いますが、分かっていないと思われます。私の場合は目の前の空気をつかんだり、息を吹きかけたりして空気を説明しました。
まどみちお先生は人間の胸、動物の胸、植物を介して空気が循環するとしています。くうきを誰かとのつながりであるととらえるなんて新鮮です。これが詩人のものの見方、捉え方です。
空気を化学記号でとらえたり、酸素や二酸化炭素といった知識でとらえるより、人と人、あるいは人と動物、人と植物の関係性でとらえれば空気を介した物語が生まれて、私たちの想像力が膨らみます。これが言葉の持つイメージの力です。いや、これができるのが詩人なんですね。
そして最後には
すべての生き物が兄弟であることを・・・と
空気を通じて、伝えたかったまど先生のメッセージです。これが伝えたいという言葉の力です。言葉は人に響く力があります。それを引き出せるのがやはり詩人です。
ということで、結構詩人の先生の絵本は言葉がきれいということもありますが、
言葉の持つ力を感じることができるので、読み聞かせにはおすすめです。ただ、何を良しとするか、あるいは良くないとするかは、やはりその読む人の言葉の感性によります。