子どもに「商売」というものを教えるのひ、良い本はないかと探しているなかで見つけた本です。
「ペレのあたらしいふく」 作・絵:エルサ・ベスコフ 訳:小野寺 百合子(福音館書店) 1976年2月3日 発行
対象:4歳から ジャンル:働く,経済
子どもがお店やさんごっこをやります。ただ、モノとそれに対する対価のことを分かっていません。金銭の授受という行為に着目して、それを演じます。
「50円になりますー。少々お待ちくださいませ」とかいってポケットから小銭を出すしぐさをします。そして、値付けも滅茶苦茶です。自称食堂でうどんとおにぎり7個も食べたのに105円です。
モノやサービスにはそれにふさわしい価格があることを、教えたいと思っていたところ、そういや価格設定って実は会社でもムズカシイですよね。それって絵本でどう表現して、子どもたちに分かりやすく伝えているのかも気になりました。
タイトル通りの物語です。ペレは大きくなったので新しい服が欲しくなります。そこで飼っていた羊の毛を刈り取り、それをもとに毛をすいてもらい、糸にしてもらい、自分で糸を染めて、布をつくってもらい、最後には新しい服をつくってもらうのです。私の書き方の通り、ペレ1人でこの製造過程ができるわけではないので、ほとんどを他者に「やってもらいます」。その代わりに自分は草取り、家畜の世話、買い物、子守り、薪集めなどの労力を提供して、その代わりに服をつくるための技術を受け取りながら、羊の毛は服へと姿を変えていくわけです。
モノやサービスを交換しあうって、これって経済のしくみです。
プライシングなんて話よりも、もっと根本的な話です。モノやサービス、需要や供給など経済のしくみのはなしは教科書に出てくれば間違いなく、文字の説明だけで理解できるものではありません。たとえ話が必要なのです。それをこの本はお手伝いと技術で説明し、かつ製品の変化の過程もこの絵本はやさしく説明してくれます。
そして、私、この絵本を読んで清々しい気分になりました。
この絵本に描かれてある、100年前のスェーデンの田園的な風景もたしかに清々しいです(この本、実は100年前に描かれています)。でも、それ以上に
モノやサービスの交換の過程で金が出てこないのです。
一度だけ、おつかいを頼まれたときはお金が出てきましたが、あとはすべてお金なしの役務の提供です。仮にペレ―や登場人物が
「糸をつむぐのは1,000円だね、ぼうや」とか
「えーおばさん、もう少し負けてよ」とか
といった会話が交わされると、清々しさが一気に吹っ飛んでしまいます。また、このような駆け引きは清々しさの反対にあるように思えます。確かにお金があると取引が円滑にすすみます。そのお金は定量的に数えられるものですから、そこに多いとか少ないとかの捉え方が発生してしまいます。そうすると、やはり多いに越したことはない、などという考えになってしまい。人間の欲が顕在化されるわけです。
経済ということや、労働ということを教えることなしに、自分は清々しくない価格設定なんかを教えようとしたんだと、深く反省しました。