矢沢永吉さんの花の正体が分かった。

矢沢永吉さんのドキュメンタリーをテレビで見た。よくありがちな舞台裏の本人を追うというものだが、舞台の演出のこだわりがすごく伝わってくる。

本人も言われていたことだが、

矢沢永吉は老いません。いつまでも舞台に立ち続けます。

さすが、と思いましたが、矢沢永吉から聞かされる「老い」という言葉に妙に違和感を覚えました。矢沢永吉さん、なんと66歳になっています。私の周りの66歳に比べるとなんて若いこと!矢沢さんも身体のメンテナンスが必要なようで、従来より抱えていた背中の痛みが出たり、診療に行くシーンなどがありました。カメラは横顔を映していましたが、やはり若く見えるとはいえ、それなりの年にはお見受けできます。

ファンの人には申し訳ないのですが、年齢的に次の世代の矢沢永吉が育ってきても良いのではないかと思います。66歳といえば、世間で言えば後継者を育てるのも役割として求められてきます。

能の秘伝書、風姿花伝には、「40代になれば後継者を育てるべきだ。年をとっての素顔の芸は見られるものではない。あくまでも全面に出ず、脇役やバックアップに徹するべきだ」(すいません、すごい意訳です)みたいなことが書かれています。風姿花伝に書かれていることは芸能やお稽古事にも通じます

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でも、、、矢沢永吉さん、全面に出ています。

今回のドキュメンタリー面白かったのが、俳優の山田孝之さんと対談するシーンがあるんです。山田さんが31歳なので、まさに矢沢さんから次世代の若者に語り継ぐべきような対談を意図したのだと思います。特に印象的だったのが矢沢さんが31歳のころの映像が出てくるのですが、

とにかく金欲しいです。

なんてインタビューに赤裸々にこたえています。正直といえば正直でそこが矢沢永吉さんの魅力ですが、なんというか今の若い世代なんかよりもバイタリティーみたいなものがかなり伝わってくるんです。金が欲しいから頑張るなんていう貪欲さが映像越しに伝わってきます。

やはりそこには昭和の貧しさを感じることができ、矢沢永吉さんはそれを克服するために成り上がったんです。

次の後継者にこれを求めるのは難しいです。時代背景が違うのですから。矢沢永吉さんは昭和時代がつくったスターです。

矢沢永吉さんのサクセスストーリーはまさに「成りあがり」に書かれています。この本、タイトルのネーミングは糸井重里さんなんですが、最後の解説で糸井さんは矢沢永吉さんの成り上がりをゴールドラッシュにたとえられています。矢沢さんの場合、その手段がロックで、成果がスターだったわけです。現在のスターは何のゴールドラッシュに群がるのでしょうか。

そういえば、風姿花伝ですが、役者の花のことに触れます。“秘すれば花”、つまり観客から見えないものほど観客の想像を駆り立てるということです。矢沢永吉さんをファンが魅了してやまない花は、貪欲さではなんだとテレビを見て感じずにはいられませんでした。

風姿花伝も花について、あるいは年代ごとの生き方を示唆してくれる良著です。

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