荒井良二さんの作品は、はまると抜け出せません。
「たいようオルガン」荒井良二(偕成社)
対象:3歳から ジャンル:絵を楽しむ
「何か新しいことを考えろ、革新的なことをやれ!」
と言われても、いきなりそんなものは出ません。なぜなら新しいことや革新的なこと、つまり創造性とは既存のものと既存のものの組み合わせにすぎないからです。
私たちの周りのヒット商品もほとんどが組み合わせです。たとえば、iPhoneは携帯とパソコンの組み合わせ、ルンバは掃除機とロボットの組み合わせ、といったように。ただし、その組み合わせ方に創造のセンスがあります。
さて、今回の本は
太陽×オルガン
ぞう×バス
なんだかよく分かりません・・・が、本を開くと太陽にオルガンが垂れて宙に浮いています。そしてその太陽が照らす道にぞうのようなバスが走っています。絵もかなりデフォルメされていて、きれいな絵とはいえないのですが、色はかなりきれいです。でも、正直に言います・・・。うちの子でも描けるんじゃないかというくらいの絵です。
ただ、この絵本のすごいのは、やはり読んでいくうちに絵本の世界に引きこまれるのと、文として書いてあることが、すべて絵の中に描かれていることです。一見、変な世界なんですけど、実に描写が細かいのです。お約束のように読んでいる方は、絵の中の世界を探索しはじめます。
「これ何が描いてあるの?」
「ここにバスを待っている人がいる」
「虫がいる」
多分、作者の世界観を旅するっていうのは、こういうことなんだと思います。そしていつの間にか、
たいようオルガン、たいようオルガン、ぞうバス はしる みちせまい
とリズムが心地よくなり、自然と口ずさみます。そして変な世界に引き込まれていく。
やはり”はめられた感”が満載の作品です。
以前、私の先輩でみすぼらしいスーツを毎日着てくる人がいました。身なりは変です。だって、スーツにスニーカーで来たりするんです。でも、仕事となると納期は確実、品質はお客さんをうならせるような細かい職人芸のような制作物をつくれる人がいました。たとえて言うなら、そんな先輩を見ているような絵本でした。