「懐かしい」と読んだ親世代は必ず口にします。それもそのはず王さまシリーズが出てもうすぐ50年。
作: 寺村 輝夫
絵: 和歌山 静子
出版社: 理論社
発行日: 1979年
対象:4歳
30年ぶりにおうさまシリーズを読んで気がついたことがあります。実は、この本はかなり計算しつくされた本ではないかということです。
絵といい、文字といい、字体といい、表現全体が緻密です。それはこの「あいうえおうさま」を読んでも伝わってきます。
あいうえおうさまは50音を使って、おうさまのキャラクターを表しています。
「あ」「い」「う」・・・と50音を使った、たった4行の表現ですが、おうさまのキャラクターが如実にモレなく現されているのです。
げーむに まけて
けらいに けちつけ
けんかに なって
けがした おうさま
小学生のころは絵が可愛いと読んでいた本ですが、実はストーリーもさることながら、こうして読んでいくとその文章センスも驚くほど高度です。
そして、ようやく気づいてきました。
ずるくて、せこくて、おっちょこちょいで子どもっぽい。おうさまは子どもの良い見本とは言えません。
「もうー、おうさまったら」
となぜか私たちはおうさまの行為を笑って受け入れてしまいます。これがおうさまの最大の強みです。
決して頼りにはならないし、へまばっかりするんですけど、「あの人がやるんだったら、仕方ないか、しょうがないか」って言う人っています。
そういう人って、かなり得な人生を送れます。
だって、周りが笑って助けてくれるんですから。
もしかして、この計算しつくされた本は、おうさまのキャラクターこそ、ひとびとに愛されるキャラクターであり、おうさまのような生き方こそ、最良の生き方ではないかということを示唆しているように思えてなりません。
じゃないと半世紀も人々に受け入れられません。語り継がれていきません。
王さまが理想の生き方だったとは思いもよりませんでした。
そんなことに気づくと、また小学生のころに読んだ「ぞうのたまごのたまごやき」を読んでみようと思わせます。そうすると、子どもにまた読んだり、子どもがそれにはまって続編を読み続ける。やはり、マーケティング面においても計算しつくされてます、王さまシリーズ。