フルーツって季節を運ぶ食べ物です「くだもの」

柿食えば鐘がなるなり法隆寺。さて、季節はいつで季語は何?

「くだもの」平山 和子(福音館書店)1981年10月発行

対象:1歳から ジャンル:食育

人間は季節の食べ物を食べて身体を調整します。たとえば、夏は身体が火照るので、夏野菜をとります。なす、きゅうり、トマト、おくらなどは代表的な夏野菜です。なぜなら、夏野菜には身体を冷やす作用があるからです。当たり前のことですが、夏に食べるから夏野菜です。また、夏に食べるのが一番おいしいのです。不思議なもので、この夏野菜、年から年中食べることができます。そうです、ハウス栽培などで気温を調整して、夏野菜を育てているのです。おかげさまで私たちは冬に夏野菜が出てきても違和感なく食べます。そして、本来その野菜ができる季節すら分からなくなっていくのです。

さて、野菜は人間によるコントロールで生産や出荷時期を調整できますが、意外とできないのがフルーツです。フルーツ売り場に行けば、年から年中並べてあるものとそうでないものがあります。もうすぐすれば、スイカが出てくると思いますが、冬にスイカはまず見ません。逆にみかんは冬に出回るものです。夏に食べるのは難しいのです。だから落語の「千両みかん」といった噺ができるわけです。フルーツは季節感をそのまま現すものなのです。

果物

季節に合わせたラインナップ。

今回の本、非常にリアリティーがある本です。果物のシズル感が伝わってきます。本当に今にでも食べたくなるような上手な絵です。ここがポイントですが、果物の場合、食べようとしてもその季節に果物が出回っていなければ食べることができません。この本を読み聞かせたときの子どもとのやりとりをよくよく思い出してみれば、

せとか

シズル感出てませんか?私の好きな「せとか」です。

「これは何?」

「梨だよ。梨はね、今はないよ。夏になったら食べれるよ」

「じゃあ、これは?」

「これは栗だよ。栗はね、秋だよ」

と、おそらく小さな子どもは、自分が知らない果物のことを聞いてきます。ただ、残念ながらそのときは食べれないことが多いのです。現物を見て食べてもらえばそれが一番早いのですが、それができません。だから、「食べるにはもう少し待ってね」なんて言い聞かせたりします。

自分の知らない果物のことがわかる。合わせて果物の旬がわかる。

というのがこの本の魅力でしょう。私は健康の諸事情で、ジュースや砂糖を取らないようにしています。その代わりに果物を取るのですが、果物がもつ果汁の甘さを堪能することができます。果物はのどの渇きも潤すこともでき、甘みもとれる素材だけで楽しむことができる食物であることをしみじみ感じます。

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