地面の下にあったのは始末の精神「地面の下のいきもの」

弱肉強食ではなく、始末の視点で話をしてみたいと思います。

「地面の下のいきもの」作: 松岡 達英 絵: 大野 正男 出版社: 福音館書店
対象:4歳から 発行日: 1988年06月

始末とは、大辞林には

物事の始めと終わり。始めから終わりまでの細かい事情、または成り行き。

とあります。関西弁では、後始末悪いなー、とか始末におけんなー、とかマイナスイメージで使われます。ただ、やはり真の意味は連ドラ「ごちそうさん」にもあったように、食材をムダなく最後まで使う(ごちそうさんの場合は食材です)ということです。たとえば、われわれは米を食べます。残った稲わらでかつては草履が編まれていました。その草履も履けなくなると、土壁の材料になっていました。このようなことがまさに始末の精神です。

藁

草鞋

土壁

始末、動物で言えば、生まれてから死ぬまでのことです。動物の場合は生まれてから、違う動物に食べられます。その動物も違う動物のエサになり、いわば食物連鎖というものです。

今回の本は土の下の生き物の食物連鎖を描いたものですが、なんか見ていると、

人間が及びもしないような世界が描かれていて、正直圧倒される

としか言いようがありません。神秘的というか、スぺクタルなんです。これはもはや食物連鎖なんかという言葉よりも、やはり「始末」なんです。動物が生きてから死ぬまで、まったくのムダがないんです。動物の糞さえも何かのエサになったり、幼虫の棲家になったりします。そして食うか、食われるかの世界が動物たちの日常として描かれています。人間なんかよりもはるかに緊張の中で生きています。そして、死んでからも誰かの役に立ってます。別に人間を鳥葬にしろ、とかそんなことを言ってるわけではないのですが、人間よりはるかに小さい生き物に感動をおぼえざるえません。

ぼくたち人間より、かしこく生きてやつがいる。しかも、とんでもないところでね・・・

絵本の冒頭はこう始まっています。その通りの内容です。そして、この絵本のさらに素晴らしいのが、表紙裏に説明書きがあります。

この本にでてくるどうぶつは、ほぼじっさいの大きさでかかれています。(ただし、小さいどうぶつは、すこし大きめになっています)

まさに「見る図鑑、感じる図鑑」といったコンセプトを体現した絵本になっていることです。図鑑よりも始末をはるかに感じることができます。こんな絵本に早く出会えれば良かったと思わせてくれる一冊です。

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