これからは木に恩恵を返してもよいのでは「木と日本人」

先日、一枚板を見せてもらい木の温もりがあり、感動をおぼえました。

この一枚板、用途は何があるでしょうか。カウンター。飲食店経営ならそのような使い方があるでしょう。出てくる料理も引き立つこと間違いなし。家庭用であればダイニングテーブルなど、家の中心となる場所で使われるのがよいでしょう。

木は私たちの生活に紛れもなく根付いています。テーブルだけでなく家の柱、梁といった骨組みから、床や天井まで木造建築では使われてきました。

「見てください、この柱ヒノキですよ」なんて言われると、思わず「おー、ヒノキですか」とヒノキの価値も分からないのに感心してみるなんて経験はありませんか。個別住宅を建てる、家をリフォームする、リノベーションする時には木材の知識が問われます。

線路のまくら木、これも実はクリの木を使っています。橋やレールのつなぎ目などでは、コンクリートではなくクリのまくら木を使うそうです。

乗り物もそうです。昔の船はすべて木造です。船底には油分を含む、マツやクスノキが使われます。

器もそうです。まげわっぱなど、思わずその曲線美に目を細めてしまいます。風呂はヒノキが使われていました。もちろん桶もそうです。ヒノキは香りを発するので、ヒノキのお風呂は香りもします。丈夫で長持ち、桐のタンスなんかも有名です。昔は娘が嫁ぐ時には桐のタンスをもたせたものですが、女の子が生まれた時から桐の苗を植え、20年後にはタンスをつくろうとしたそうです。

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その他にも、まな板、箸、太鼓、下駄、仏像と木は私たちの生活にまつわる、ありとあらゆるものに使われていました。

人間と木、切っても切り離せない関係だったのです。人間の勝手な都合で森林は伐採されたり、森林がつくられたりしてそれが生態系をゆがめています。そして木の代わりに金属やプラスチックを使うようになるのですが、再利用できない材質は環境にとってよくありません。

木材は材質によっては再利用できるものがあります。昔から得ていた木の恩恵を今度は人間が木に返す時代にきています。消費ではなく、再利用や再生。これからの時代の生産活動のキーワードです。今回紹介する本、お値段高めですが、図鑑や博物誌と思えば、私たちの歴史のなかで木がいかに貴重な存在であったかを再認識することができます。大事につくられたものは大事に使われ、語り継がれてほしい。子どもたちに残せるものは何か、を投げかけているような本です。

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